コロナ差別 事例集

今、新型コロナウイルスに関連した、差別や人権問題が、身近なところで、はびこって来ています。日本赤十字社は、「新型コロナウイルス」には3つの感染症の顔がある、とうったえています。第一の感染症の顔は「病気」そのもの、第二は「不安・恐れ」、第三は「嫌悪・偏見・差別」です。それらに、煽られないように一度冷静になり、立ち止まってみましょう。

以下に示す多くの事例を知ることにより、なぜ新型コロナウイルスを恐れるのか、戦うべき敵は「新型コロナウイルス」であり「隣人」ではない事を再認識してください。

感染を完全に防ぐのは難しい今、感染した人を責める言葉は、やがて自分にも降りかかる可能性があることを知ってください。

看護職員の実情(2020年9月)
新型コロナウイルス感染が拡大した昨年、看護職員の約2割が「差別や偏見にあった」経験があることが分かりました。(日本看護協会、2020年9月看護職員3万8千人調査ニヨル)

主な調査項目:
・差別や偏見を受けた経験がある…20.5%
・家族や親族が周囲の人から心ない言葉を言われた…27.6%
・患者から心ない言葉を言われた…19.8%
・地域住民から心ない言葉を言われた…19.2%
・勤務先の同僚から心ない言葉を言われた…16.5%
・学校で保護者である看護職員が入室を断られた…4.4%
・店舗や施設で入店を断られた…4.1%
・看護職として働きたくない(全看護職員)…8.9%
・看護職として働きたくない(差別や偏見を受けた看護職員)…14.6%
・実際に離職のあった病院(回答のあった病院のうち)…15.4%
・実際に離職のあった病院(感染者を受け入れていた病院のうち)…21.3%

この調査から、看護職員は心身ともに疲労困憊している状態がずっと続いていることが伺えます。
私たちは、看護職員の職務の大変さを理解するとともに、誹謗中傷や差別をしないこと、そして感染しないように心がけましょう。
コロナ差別禁止(防止)条例
全国的な、新型コロナの感染が拡大しているなか、コロナ差別も完全には収まっていない状況です。
そんな中で、全国の自治体で、コロナ差別の禁止(防止)条例が可決される動きが増えています。

河内長野市と河内長野市人権協会は、10月16日「新型コロナウイルスに関連した差別を許さないまち宣言」を共同宣言しました。
さらに、11月30日、河内長野市議会は大阪府内でもさきがけて、コロナ差別防止条例案を可決し、即日施行されました。市民への啓発チラシの配布や相談活動の強化などがはかられ、感染者や医療従事者が孤立しないよう呼びかけています。

10月25日の東京新聞の情報によれば、既に東京都、沖縄県石垣市、千葉県流山市、長野県、岐阜県、沖縄県、鳥取県、茨城県下妻市、栃木県那須塩原市、埼玉県深谷市、山梨県上野原市、愛知県大府市、青森県むつ市、茨城県、愛知県、徳島県、宮城県栗原市、福島県白河市、山口県長門市、京都府京丹後市などの地方自治体で、新型コロナウイルスに絡み差別禁止を盛り込んだ条例が成立しており、さらに自治体数も増えてきています。罰則はないのがほとんどですが、成立の意義は大きく抑止効果がみこまれます。
今後は、被害者への心のケアなどの支援が望まれています。
はびこるコロナ差別 日本人の「素晴らしさ」はどこに?
上記の衝撃の標題が、9月のある新聞社のコラム記事に掲載されました。
「日本人は礼儀正しく、勤勉で、謙虚である」とよく言われているにも関わらず、過日の松江市の高校に対する「日本から出て行け」「学校をつぶせ」や、奈良県の大学に対する「関係のない一般学生が教育実習を断られたり」といったバッシングでは、日本特有の「同調圧力」の凄さを感じさせられます。
行き過ぎた正義感を振りかざす前に、本当に立ち向かうべきは「新型コロナウイルス」であることを、思い出してください。下記「結いの島」や「シトラスリボン運動」の記事を読んで、冷静になりましょう。
(参考:読売新聞オンラインコラム)
コロナ感染者気遣う「結いの島」
8月22日、南日本新聞社のホームページによれば、人口5千人余りの与論島を襲った新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)発生から1カ月が経過。結いが息づく島の住民たちは、県本土の病院から回復して帰島した人たちを「おかえり」「大丈夫だったか」と出迎えたという。新型コロナに感染し、数日前に職場復帰した40代女性会社員は「テレビで感染者への中傷が取り上げられていたので島に戻るのが少し怖かった。温かく迎えてくれて本当にありがたい」と語っている。
町内では感染が相次いだ当初から、ラインなどで感染した人の名前が飛び交った。他の地域では感染者狩りになりかねない行動が、ここでは正しく理解することにつながり良かったという。与論郷土研究家は「歴史的にも疫病や飢饉(ききん)などの苦難を味わってきた経験から、誰もが感染の可能性がある中、感染した人を非難する考えには至らなかったのでは」と話している。今こそ気持にゆとりを持ち冷静になることが大切なようです。
シトラスリボンプロジェクトのご紹介
新型コロナウイルス感染症への感染は、本人の責任ではないにもかかわらず、感染者への直接的な差別事例が各地でみられます。差別は、感染者の家族や医療従事者、コロナ禍を支えてくださっているエッセンシャルワーカー(物流や店舗で働く人)にも広がっており、差別的な言葉をかけられたり、理不尽なクレームに苦しめられています。
日本で流行っている「自粛警察」は感染者の早期発見を阻害し、感染拡大を促進する面を持っています。感染したら非難されるのではなく、正確な情報に基づいて「お疲れさま」と受け入れてもらえる街に住みたいと思いませんか?
シトラスリボンプロジェクトは、コロナ禍で生まれた差別、偏見を耳にした愛媛の有志がつくったプロジェクトです。
「地域」「家庭」「職場(または学校)」を象徴する3つの輪をかたどったシトラスのカラーリボンをつけ、「ただいま」「おかえり」の気持ちを表す活動を広められています。思いやりの輪を広げて、新型コロナウイルス感染者や医療従事者への差別をなくそうというプロジェクトで、愛媛県発でいま全国に広がりを見せています。
一人ひとりができることを「ちょびっと」ずつ始めようという気持ちから団体名は、「ちょびっと19+」。

※河内長野市人権協会は、シトラスリボンプロジェクトに賛同しています。
新型コロナウイルスが世界に与えた影響
国連経済社会局(DESA)が7月7日発表した報告書によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)はほんのわずかな期間のうちに、未曽有の危機を生むとともに、SDGsの達成に向けた前進にさらに混乱をもたらしたとの報告を発表しました。
ここでは、COVID-19が誰にでも同じ影響を与えているわけではないことを強調しています。新型コロナウイルスはいかなる人にも、いかなるコミュニティーにも影響を与えているものの、その影響は平等ではありません。むしろ、すでにあった不平等や不正義を明るみに出し、さらに悪化させています。そして、世界の最も貧しい人々と最も脆弱な立場に置かれた人々に最も深刻な影響を及ぼしているとの報告がありました。
報告の1部を紹介すると
「医療や予防接種サービスが混乱し、食事・栄養サービスへのアクセスも限られていることで、2020年には、5歳未満の幼児の死者が十万人単位で、また妊産婦の死者が数万人単位で、それぞれ増えるおそれがあります。女性や子どもに対する家庭内暴力の急増が報告されている国も多くあります。…」
日本でも倒産や失業などで貧困状態に陥るケースが増えている他、人権問題も発生しています。社会的弱者ほど大きな影響を受けてしまう傾向にあり、様々なイライラがつのって家庭内暴力やご近所問題が起こりやすくなっている傾向があります。支援の輪を広げる活動が望まれています。
東京差別
東京の写真新型コロナウイルスの感染が、1日に200人を超えるなど、緊急事態宣言が終わった後に再び感染拡大する中で「東京差別」と言う言葉がテレビやネット・SNSなどで広まっています。
事例としては、
・東京在住の人が田舎の親から帰省するなと言われた。
・6月には、岩手県内で、県外からの転入生に登校自粛を要請していたことが、SNSで波紋を広げた。
・7月に入ってからは、「都内のナンバーをつけているからか、車が傷つけられた」等・・・

人は、目に見えない恐怖に遭遇すると不安になり、見えている「何か」「誰か」を攻撃し、排除することで、恐怖から逃れようとするようです。
戦うべき相手は「新型コロナウイルス」です。どうか冷静になりましょう。

日本赤十字社は、「新型コロナウイルス」には3つの感染症の顔がある、とうったえています。
第一の感染症の顔は「病気」そのもの、第二は「不安・恐れ」、第三は「嫌悪・偏見・差別」です。
それらに、煽られないように、振り回されないように一度立ち止まってみましょう。
インドネシアで警察が人権侵害
国家人権委員会が、国家警察に警告!
5月インドネシアでは、主要都市で一種の「都市封鎖」にあたる大規模社会制限(PSBB)に基づく取り締まりを実施している。マスクをせず外出していた男が警察に見つかり罰を受け、記録撮影までされる。

危機に乗じて権力をもつ者が好き勝手をし始めたとみて、「国家人権委員会(Komnas HAM=コムナスハム)」は、警察が過剰暴力や脅迫、不要な拘束や逮捕、犯罪の捏造など多くの人権侵害にあたる事案を引き起こしているとして国家警察に警告を発した。またジョコ・ウィドド政権に対しては、警察の監督強化を要求する事態となっている。
コムナスハムは政府機関でありながら独立組織として主に人権問題を主管し、特に同じ政府側の機関である国軍や警察といった治安当局に対しても国民の人権擁護、言論・報道の自由などの立場からこれまでも積極的に介入。政府の人権擁護の砦とされ、重要な役割を担ってきた。(参考:NEWSWEEKホームページ)
医療従事者に対する偏見や排除
医療従事者達のイラスト4月27日、大学病院で働く医療従事者の子どもが保育園から、院内の医師が新型コロナウイルスに感染したことを理由に登園を拒まれることがあったと明らかにした。県は「差別があってはならず、医療従事者を応援してほしい」としている。政府や日本赤十字社は、医療従事者に対する誤解や偏見に基づく差別を行わないように求めているが、こうした差別は各地で起きており、タクシーの配車を拒否されたり、病院職員の同居家族が会社から休むことを指示された事例も各地で発生している。 行政の担当者は「誰でも感染することを意識してほしい」と述べ、患者や医療従事者への差別や偏見を持たないよう呼び掛けた。 (参考:岐阜新聞ホームページ)

コロナ自警団
自家用車のイラストなぜ日本人は「自粛しない人」をこれほど攻撃したがるのか

「外出・接触8割減」のスローガンのもと、4月7日に始まった、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための「自粛」要請。市民社会はその要請に応じ、街は人どおりが少なく閑散とし、閉ざされた店の入口には「一時休業」の張り紙が目立ちました。あくまで「お願い」であり、本来断る自由があるはずなのに、聞き入れなかった者は、まるで社会の法秩序を逸脱した犯罪者・極悪人であるかのようにみなされ、市民社会から「私刑」される——そのような相互監視的な同調圧力によって、全国各地で緊迫感と閉塞感が高まる場面がありました。他県ナンバーの自動車を見つけると通報されたり、東京ではスポーツクラブが営業していることに腹をたて、入口を蹴って壊した男が逮捕されるケースまでありました。(参考:日テレNEWS24)

コロナ禍の今、「同調圧力」という言葉が注目を集めています。「同調圧力」には、公共を重視するという良い面がある一方で、戦時中のような集団によるブレーキの利かない行き過ぎた圧力になることもあります。どうか皆さん、いまいちど冷静になって、誰もが新型コロナウイルスに感染する可能性があること。感染した人が問題なのではなく、私たちが立ち向かうべきなのは、新型コロナウイルスとその脅威なのだということを、再確認しましょう。
日本赤十字社は、「新型コロナウイルス」には「3つの感染症の顔」がある、とうったえています。詳細はこちら
「これが差別か」と思った、男性の話
福岡市に住む38歳の自営業の男性は、3月下旬:体温38.5度、コーヒーの味がしないので、内科に電話。内科は「薬を出す」「病院には来ないでくれ」との対応。保健所は「検査できない」と門前払い。
4月4日:陽性と判明。保健所は「入院できる病院がない」「とりあえず家で耐えてくれ」薬ものむな…。その後高熱で病状悪化、自分で入院できる場所を探し、11日間入院後検査で2回陰性となりやっと退院。

新型コロナウイルスが陰性となって退院したあと、肺炎の経過観察を病院にお願いしたところ「もしあなたがコロナの発生源になったらうちの病院も困るんで」などと8件断られたといいます。(参考:NHK特設サイト)
大学に対する相次ぐ誹謗中傷
3月上旬、ヨーロッパ旅行に行った学生(当時)らが感染し、ゼミの卒業祝賀会で感染者集団「クラスター」が発生するなど、関連する感染者は70人以上に上りました。大学には「感染した学生の住所を教えろ」「大学名を改名しろ」や「まじで村八分にされろ」などと、過激な誹謗中傷が電話・メール・SNSで相次ぎました。(参考:MBSホームページ)
さらに、8月には、天理大学のラグビー部員約50人の感染が判明すると、まったく接点のない同大学生に対する就職面談時の差別的な扱いの事例が報告されています。今一度冷静になり、正確な情報にもとづく偏見や差別のない冷静な対応を求めたいと思います。
後日談:
①京都産業大学は、2020年3月に学生のクラスターが発生し、様々な誹謗中傷を受けました。ただし、10月には島津製作所と連携して学内にPCR検査センターを設置し、検査導入によって安心安全なキャンパス実現に、先駆けとなる取り組みをされています。

②天理大学ラグビー部は、2020年8月に寮で62人のクラスターが発生し、多くのバッシングを受けるとともに1ヶ月近い練習中止を余儀なくされました。練習を再開後は、活動休止を乗り越え全国大学選手権を勝ち進み、1月11日の決勝では、強豪早稲田を圧倒し、初の日本一に輝きました。

両校とも、様々なバッシングにさらされながらも、悔しさをバネに前向きに活動することで、世間の誹謗中傷を乗り越えてきたよい例になったのではないでしょうか?
ただし、世間の誹謗中傷こそが本来あってはならないものです。
日本は、同調圧力の強い国だと言われることが多々あります。
温かい気持ちで、周りの人たちと寄り添える社会を作って行きたいものです。
派遣社員に 「マスク支給なし」の非情
マスクのイラスト会社が入っているオフィスビルの別のフロアで、新型コロナに感染した疑いのある人が出た。テレワークが認められていない派遣社員は出社せざるをえない。「せめてマスクをもらえませんか?」と訴えると、備品を管理する社員から“本当に必要な人のためにとってあるものだから、あげられない”と断られた。工事業者や現場に出向く社員には、マスクを支給しているのに、「私たち派遣は、本当に必要な人には入らないってことですか?」と掛け合ったが、しりぞけられた。 (参考:週間女性PRIME)
マスク姿のアジア人女性が 二ューヨークで暴行受ける
アジア人女性のイラスト2020年2月、二ューヨークの地下鉄の駅でマスク姿のアジア人女性が「病気持ち」「俺に触るな」と罵倒され殴る蹴るの暴行を受けた。ニューヨーク市警(NYPD)は、事件の様子を捉えた動画をソーシャルメディアで共有。新型コロナウイルスに関連したヘイトクライム(憎悪犯罪)の可能性があるとして、女性に被害を届け出るよう呼びかけている。(参考:NEWSWEEKホームページ)
クルーズ船乗客に対する差別や偏見
クルーズ船のイラスト2020年2月3日に横浜港に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」は、日本政府が法律に則って海上において検疫を実施し、3月1日にすべての乗客、乗員の下船が完了しました。乗員・乗客数3711名、PCR検査3618名、陽性者696名、無症状者410名。4月15日までに発表された死者数は13名でした。海外メディアからは、「なぜもっと早く検査をし、下船させるための迅速な対応が取れなかったのか疑問が残る」との批判が高まりました。また、日本人乗客が陰性が確認され下船後に、ご近所から偏見の目で見られるなどの問題もありました。(参考:テレ朝NEWSホームページ)